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隠しテーマは「睡眠心理学」
2018年10月14日(日)に江戸川大学におい
て「高校生のための心理学講座」を開催いたし
ました。本学で開催したのは,2018年度から
「高校生のための心理学講座」が公募制になっ
たのを知ったことがきっかけです。江戸川大学
の広報という側面がなかったとはもちろん言い
ませんが,もう一つ大きな動機づけとしては,
高校生に,マスコミなどから伝わる「偏った」
心理学のイメージを払拭し,実際に行われてい
る研究の姿を知ってほしいこと,さらにその中
でも,特に睡眠に関する心理学的な研究につい
て知ってほしいことでした。
これをお読みの心理学の研究者の中にも,な
んで「睡眠」なんて「偏った」心理学を紹介す
るのか,とお思いの方もいらっしゃるのではな
いかと思います。しかし,世界的に見れば,睡
眠研究に占める心理学者の割合は決して低くあ
りません。また,大学の定番の教科書(たとえ
ばヒルガードの心理学)にも,必ず「意識」の
章があります。私がここでいう「意識」は,小
難しい「意識」のことではなく,「意識水準」
のことです。そこでは,誰でも殆ど毎日体験し
ている意識低下の状態である「睡眠」が解説さ
れているのです。日本の心理学科の学生で,睡
眠段階について答えられる学生がいったいどの
くらいいるのでしょうか。日本の心理学は,大
脳皮質で行われている処理か,せいぜい,大脳
辺縁系か視床下部の感情に関わる処理だけしか
扱わない場合が多いのではないでしょうか。し
かし,もっと基本的な脳部位である脳幹の働き
によって脳の活動は最も大きなインパクトを受
けます。なにしろ眠っちゃったら「心」もクソ
も有りません(失礼)。
それほど,心の活動に激烈なインパクトを与
える現象になぜ心理学者が興味を持たないのか
不思議で仕方がありません。不適切な睡眠(短
すぎる,夜更かし朝寝坊,分断されている等)
をとることで,日中の認知活動はおおいに阻害
されます。
認知研究をされている先生方!学生の睡眠覚
醒リズムを制御して実験されていますか?うまく
結果が出ないのは,日中の覚醒状態が阻害され
ている(世界で最も睡眠時間の短い)日本人の
大学生を対象としているからかもしれませんよ!
臨床心理学の先生方,文科省の調査に対して
不登校経験者が答えた不登校のきっかけの第1
位は「友人との関係」でした。予想通り,です
か。では,2位はなんでしょうか? 「先生と
の関係」?「親との関係」?いやいやいや,2
位は,「生活リズムの乱れ」なんです。うつ病
者は眠れないということはよく知られていま
す。だからうつになると不眠がおまけでついて
くると思っている方も多いと思います。しか
し,うつが始まる前に,不眠が始まる人が,う
つ病者の半数近くいるのをご存知でしょうか。
大学時代に不眠を経験した人とそうではない人
を約40年間追跡した研究があります。40年間
のうつ病の累積発症率は,不眠経験者はそうで
ない人の3倍以上にもなります。
ということで,睡眠と心理学は非常に密接な
関係にあります。そこで,「高校生への心理学
講座」を「睡眠」を隠しテーマとして開催させ
ていただきました。以下,登壇いただいた先生
方の講義の抄録を,実際の講義順に掲載します。
高校生のための心理学講座
@江戸川大学
江戸川大学社会学部 教授
福田一彦
(ふくだ かずひこ)
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私の出前授業
Profile─
1988年,早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。1989年,東邦大
学医学部より医学博士の学位取得。福島大学教育学部講師,助教授,教授,同大学
共生システム理工学類教授を経て,2010年より現職。江戸川大学睡眠研究所所長,同
大学総合情報図書館長を兼任。専門は精神生理学・睡眠心理学。著書は『「金縛り」
の謎を解く』(PHPサイエンス・ワールド新書),Sleep Onset: Normal and Abnormal
Processes(分担執筆,APA)など。
「眠りの発達心理学」
(明治薬科大学・駒田陽子先生)
私たち人間は,朝目覚め,昼間活動し,夜眠
ります。でも,生まれたばかりの赤ちゃんの頃
は,数時間おきに眠ったり起きたりを繰り返し
ていました。私たちの体の中には,時計が備
わっていて,その生体時計は年齢とともに変化
をするのです。高校生のみなさんの生体時計は
どうでしょうか。勉強やスポーツなど高校生活
の土台となる眠りについて,発達という観点か
ら考えてみたいと思います。
「寝不足の生理心理学」
(江戸川大学・浅岡章一先生)
寝不足は様々な心理的問題を引き起こしま
す。そのメカニズムを理解するには,我々の
「こころ」が主に脳の活動によって生じている
ことをおさえておく必要があります。そこで,
この講義では,まず「こころ」と脳の活動との
関係について説明します。そして,その脳の活
動に対して寝不足がどのように影響するかを説
明しながら,睡眠の乱れが引き起こす様々な問
題について考えていきたいと思います。
「不眠の臨床心理学」
(江戸川大学・山本隆一郎先生)
きちんとした生活習慣を心がけても「眠れな
い」という悩みを抱える方は少なくありません。
そのような方は,もしかすると,良かれと思っ
て睡眠のためにしていることが,かえって逆効
果になっているかもしれません。「眠れない」と
いう悩みがどのように始まり,続いてしまうの
か?どのようにしたら改善できるのか?につい
て科学的な根拠に基づく心理療法である認知行
動療法の立場から解説したいと思います。
「金縛りの精神生理学」(江戸川大学・福田一彦)
金縛りは「霊」の仕業か? そんなことはあ
りません。生理学的にほぼ100パーセント説明
できる睡眠関連現象です。一見すると不思議な
現象でも科学の研究の対象となり,客観的な事
実を基に理解することができるのです。金縛り
は世界中に存在し,魔女のせいや宇宙人のせい
にしている国もありますが,基本的な身体症状
は全く共通です。不思議現象を科学的に研究す
る楽しさと物事を客観的論理的に考える大切さ
を学びます。
「夢見の認知心理学」(文教大学・岡田斉先生)
夢についての心理学での研究は,夢には隠さ
れた意味があると考える精神分析,REM睡眠
に焦点を当て脳内メカニズムを探究する研究,
の二つの流れが主流でした。しかし,近年その
どちらでもない認知心理学的観点からの研究が
見られるようになってきました。この講義では
「夢は見るものなのか? 色つきの夢を見る人
は?」という認知的な疑問を例に取り上げ,研
究の面白さを伝えたいと考えています。
いかがでしょうか。手前味噌ではあります
が,面白そうでしょう。当日は,これら講義に
加えて,昼休みに「睡眠実験室の見学」も行い
ました。高校生の皆さん,保護者の方々,そし
て認定心理士の方々にも参加していただきまし
たが,アンケート結果から皆さんに非常に好評
だったことがうかがわれ,企画者としてはとて
もありがたく思いました。今回の企画にご協力
いただいた先生方,参加してくださった皆様,
そして,このような機会を与えていただいた日
本心理学会の関係者の皆様に感謝したいと思い
ます。ありがとうございました。